不労所得研究所Free Lunch Lab
言語: 日本語

エッセイ

月1万円を、全部見せながら稼ぐ実験:「自分のベーシックインカム」という言葉について

2026年11月1日、会費制のオンラインコミュニティ「善意立国」が、新しいページで再出発しました。題は「AI だけでどこまで稼げるか ── 善意の鬼のカネ」。松田元さんが作ったAI「佐藤」が、自分で稼ぎ方を試し、その結果を毎日、数字のまま公開していく試みです。会費は月2,980円です。1

稼ぎ方の情報は、うまくいった話ばかりが目立ちがちです。このページは逆で、0円の日も、うまくいかなかった手も、そのまま書くと約束しています。ページの終わり近くには、目指すものとして「善意で作る、自分のベーシックインカム」という言葉があります。この試みのよいところを見たうえで、この言葉についても考えてみます。

ページに書かれていること

ページによると、これは「実証実験」です。佐藤が稼ぎ方を選び、自分でやってみて、数字を毎日出す。会員(ページの言葉では「国民」)は、同じ手順で試せる。AIにできないこと(口座の名義、本人確認、審査待ち)も隠さずデータにする、としています。目標は、会費以上を毎月稼ぐこと。ページの冒頭には、目標の1万円から会費の2,980円を引いて「+7,020/月」とする式が置かれています。1

目標は三段です。1〜3か月目は、セルフバック込みで月1万円。4か月目からは、ポイ活、アフィリエイト、株主優待の組み立てで、毎月くり返し入る1万円に置き換えていく。その先は、月30万〜40万円を「国民と一緒に目指す」。この三段目に、「善意で作る、自分のベーシックインカム」という言葉が添えられています。1

手法は四つです。アフィリエイト(セルフバックを含む)、ポイ活、株主優待、そして株・仮想通貨・FX・オプション・先物までの「全ての取引」。まずは紙の上の取引から始め、最初の銘柄は任天堂(7974)と東京エレクトロン(8035)を各100株とし、口座が開いた日から本物に替える、と書かれています。FX・先物・オプションは預けたお金より大きく損をすることがあるので、その仕組みと損を止める手順を最初に解説してから始める、とも書いています。1

全部見せる、という約束

このページでいちばん目を引くのは、記録のつけ方です。11月1日から毎日、佐藤が自分で動かした金と手法を、その日のうちに数字のまま出す。見出しは「0円の日は、0円と書く。」紙の上の取引も、銘柄ごとのエントリー(日時・値段・株数)と毎日の損益を、勝った日も負けた日もそのまま出すとしています。1

失敗も数字で出しています。見出しは「十七日で、増えたのは0人。」会員は42人、17日間で新しく入った人は0人、打った手は7手、効いた手は0手。「十月二十八日の勝負に、この国は大敗しました」と、自分で書いています(ページの数字は2026年10月29日時点)。1

掟としては、毎日の帳面を欠かさない、エントリーと損益を全部出す、届かなかった月もそのまま書く、稼ぎを請け合わない(「入れば◯円」とは言わない)、一人ひとりの売買の相談には答えない、を掲げています。毎月末には、会費の収入(手数料を引いた額)、経費、目標に届いた会員の割合、紙の銘柄の勝率も出すとし、毎日の帳面のハッシュを公証して、後から書き換えられないようにする計画もあります(11月中に始めるとしています)。1

意見稼ぎ方を語る場で、うまくいかなかった数字を先に見せ、「入れば◯円」とは言わないと書くのは、とても珍しいことです。損が大きくなりうる取引について、始める前に仕組みを説明するという順番も誠実です。書き換えられない帳面まで用意しようとしている点も含めて、この透明さは、それだけで読む価値があります。

自分の収入を、自分で作る

セルフバックとは、自分でクレジットカードを作ったり口座を開いたりして受け取る報酬のことで、カード1枚、口座1つにつき一回きりです。ページ自身もこのことをはっきり書いていて、最初の三か月は「一回きりで大きく入る報酬」で勢いをつけ、4か月目からは「毎月 続く物」に置き換える、という順番を組んでいます。1

意見一人ひとりが、自分の収入の柱を少しずつ作っていく。この志は前向きなものです。AIが先に試して、手順と落とし穴を書き、AIにできない部分まで記録する。続いていけば、会員だけでなく、同じことを考える人にとっても役に立つ公開の記録になるはずです。

BIENの5つの条件で見ると

ベーシックインカム世界ネットワーク(BIEN)は、ベーシックインカムを「資力調査や就労要件なしに、すべての人に個人単位で無条件に届けられる、定期的な現金給付」と定義し、定期的、現金、個人、普遍的、無条件の5つの性質を挙げています。2 タイの1万バーツのエッセイで使ったのと同じものさしです。

当てはめてみると、毎月の数字を目指す点は「定期的」に近く、一人ひとりが自分の名義で稼ぐ点は「個人」に重なります。一方で、誰かから払われるお金ではないので「現金給付」には当たらず、会費を払った会員が自分で作業をするので「普遍的」「無条件」でもありません。ページ自身も「一万円も、三十万円も、毎月の稼ぎを約束するものではありません」と書いています。1

意見つまりこれは、厳密な意味でのベーシックインカムではありません。でもそれは欠点というより、別の名前で呼ぶ価値のあるものだ、ということです。近いのは、公開の家計簿をつけながら自分の収入を育てていく、個人の収入づくりの実験でしょう。知っておきたい事実として一つ挙げると、この計画で毎月決まって動くお金は、会員が払う月2,980円の会費です(1年で3万5,760円)。ページは、その会費の収入も毎月末に公開するとしています。1

くり返し払われる給付との違い

このサイトの年表には、実際にくり返し払われている給付があります。アラスカ州の永久基金配当は、1982年から、条件を満たす住民に州の基金から毎年配当を払っています。マーシャル諸島の Enraは、2025年11月から、国内に住む国民全員に、子どもも含めて3か月ごとに約200ドルを払っています。

意見これらは、受け取る人が何も払わず、働くことも求められない給付です。善意立国の試みは、それとは別の道、自分で稼ぐ力を育てる道を行っています。どちらも、暮らしの土台を厚くしようとしている点では同じ方向を向いています。言葉を分けておくと、どちらのよさも見えやすくなります。

読む人へのヒント

意見「ベーシックインカム」という言葉を見かけたら、いくつか確かめておくと安心です。お金は誰から誰に払われるのか。始めるのに先に払うお金はあるか。条件や作業はあるか。自分が手を止めても続くのか。善意立国の場合は、ページがこれらにほぼすべて自分で答えています。

もう一つ、ページによると12月から、会員が掲示板に書き込むと Optimism 上で WWB というトークンがバーンされ、会員には国民の証として SBT が渡ります。ページは、燃える量も証も記録であって、会費の値打ちやトークンの値段を約束するものではないとしています。仕組みに関心があれば、ページの説明を一度読んでおくとよいでしょう。1

このサイトは、預け入れや投資が必要なもの、見返りを約束するもの、参加に会費が要るものを一覧には載せていません。善意立国もその意味では一覧の外にありますが、取り上げる価値があると考えて、このエッセイを書きました。

AIが自分の稼ぎを毎日全部見せ、0円の日を0円と書く。この試みが続き、月末の数字がどう積み上がっていくのかを見守りたいと思います。それを何と呼ぶかを丁寧に選べば、この実験のよさは、もっとまっすぐ伝わるはずです。

出典

  1. Zenination (a paid membership community) — “How far can you earn with AI alone: the money of the goodwill ogre” (in Japanese; figures on the page as of 29 Oct 2026; fetched 3 Nov 2026) ↩
  2. Basic Income Earth Network (BIEN) — About Basic Income ↩

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